止まらない   April , 2014 

 交差点の向うで停止している空車に乗ろうと、合図を送って暫らく待ちました。信号が青になり目の前にやってきたそのタクシーのドアが開くと、「お待たせしました〜」と甲高い声が響き渡りました。“ふなっしー(千葉県船橋市非公認キャラ)”を連想しながらシートに腰を下ろすと、「どちらまでですか〜」と言いながら相変わらずハイトーンの運転手が振り返りました。髭が濃いおじさん顔を見た途端、その容姿と声とのギャップに私は思わず噴き出しそうになってしまいました。「○○(行き先)までお願いします」とは言えず、笑いを必死に堪えて、「○○・・・」と蚊の鳴くような声で俯いたまま答えました。

 当人を目の前にして笑い転げるわけにもいかず、「くっ・・・くっ・・・」という声を押し殺して私は車の床に視線を落としました。この状況を脱しなければ直に笑い始めてしまうのは明白だったので、ハイテンションで話す人の顔をあれこれ思い浮かべました。“さかなクン”に行きつくと気持が落ち着いてきて、天真爛漫に話しかけてくる運転手との会話も次第に成り立つようになりその個性にも慣らされました。
 よく通る声に加えてオホホではなくアハハ、たまに“明石家さんま”のようなヒーヒーという笑い声も出てきてしまう私なので、タクシー内で爆笑する恐怖から解放されて楽しく車を降りられた時はほっとしました。

 ツボにはまってしまうと、笑い出しても喋り出しても泣き出しても止まらないところがあります。周りの人の困惑ぶりはさておき、私自身はすっかり爽快な気分になっています。
 最近は、“涙活(るいかつ)イベント”というのがあるそうです。泣ける映画を見たり朗読を聞いたりして涙を流し、ストレスを解消する活動だそうです。毎日が緊張と多忙の連続で泣くことができない人にとって、涙を流せる時間をキープしてのリラックスタイムは快適なのでしょう。
 学生時代までは後先を考えずに号泣してむくんでしまった瞼に慌てふためいていた私も、社会人になると翌日のスケジュールによっては泣くことをセーブするようになりました。試練を乗り越えて輝いているスポーツ選手や逆境をはねのけて周りを元気にしてくれている人々のニュースに感動の涙を流すことは増えましたが、涙が止まらなくなると分かっている映画やドラマを見る回数は減ってきました。

 日程に関係なく今でも健在なのは、“笑い出したら止まらない、喋り出しても止まらない”です。精神が安定しているから笑えるのか不安定だから喋り続けるのか性格なのかは分かりませんが、ストレス解消に役立っていることは確かです。心から笑える時間は、これからも大切にして行こうと思っています。



TOP前へ 次へTOP    Top Home セレモニー・コンダクターズ