五島美術館   June , 2014 

 二年の歳月を要した大規模改修から約一年半経った五島美術館を、先日久しぶりに訪ねてみました。建物自体はそれほど変わっていませんでしたが、美しくなった外観や本館内の雰囲気に心が躍りました。
 いつもは展覧会場へ直行していたので、今回は先ず本館西側に広がる庭園を時計回りに歩いてみることにしました。本館を出ると中庭には五葉松があり、建物に沿って南方向に進むと天佑庵門が見えてきました。期待に胸をふくらませ門をくぐり散策路を辿ると左手には稲荷丸古墳、右手には明治時代に建てられた茶室「古経楼(こきょうろう)」と立礼席「富士見亭」(どちらも茶会で利用される時以外は非公開)がありました。その先の藤棚傍には東西南北が個性的に刻まれた道標があり、目を引きました。


五島美術館
不老門 五島美術館の外塀
正門側    本館     庭園側

ゴヨウマツ         庭園案内図       本館横の散策路     天佑庵門                  稲荷丸古墳

壽老人        茶室(古経楼)  

茶室(富士見亭) 

藤棚と道標(北・西)         東         南 

 皇太子殿下(昭和天皇)御手植松の下には何故か、愛らしい一対の象のモニュメントがありました。
 梅雨の晴れ間で鮮やかさを増した緑の中を通り抜けていくと、見晴台庭園に達します。第2講堂・銀閣寺手水鉢と五重塔・昇陽殿の他にも、庭木が形成した洞窟から顔を覗かせているように光悦好燈籠・茶庭燈籠・濡鷺型燈籠が置かれていました。美術館の敷地内には数多くの石燈籠が点在していますが、濡鷺型燈籠にもそれぞれ微妙な違いがあり手作りの良さを味わえました。
 東急電鉄の五島慶太元会長が蒐集した古美術品を公開する目的で1960年に誕生した五島美術館は、国宝の「源氏物語絵巻」「紫式部日記絵巻」を所蔵していることで知られています。また鉄道事業の際に引き取った石仏・石塔等も庭園内のあちこちで目にしますが、名称が横に添えられているので予備知識のない者でも興味深く見ることができました。全ての草木にも名入りの小さなプレートが添えられていると言っても過言ではなく、見過ごしてしまいそうなホウチャクソウに黒紫色の実が付いているのに気付くこともできました。見晴台庭園の庭園案内図は中庭にあった案内図を180度回転させてあり、方向音痴の私にはとても分かり易く有難いものでした。来館者への“お・も・て・な・し” が、随所に感じ取られました。
 多摩川に向かって最大高低差35メートルで傾斜している庭園には上部から下部への経路が何通りもありますが、見晴台庭園からあずま屋に通じる石段の傍には多重層塔石台付や岩燈籠がありました。目を転じると二子玉川ライズのビル群が見え、約6000坪の敷地がこのように残されていることに心が休まりました。


皇太子殿下御手植え松・一対の象

    見晴台庭園          第2講堂      濡鷺型燈籠(庭園内・茶室傍)

銀閣寺手水鉢と五重塔        昇陽殿             庭木の中に燈籠   光悦好燈籠・茶庭燈籠・濡鷺型燈籠 

ホウチャクソウの実         庭園案内図   多重層塔石台付  岩燈籠の向うに二子玉川ライズ   あずま屋への石段

 幼いころから階段(夏の怪談も)恐怖症の私は綺麗に剪定された植木に目をやるゆとりもなくあずま屋で休憩する気分にもなれず、ひたすら足元を見つめて手すりのないでこぼこな石段を一気に下りました。
 菖蒲園で庭師が作業をしていたので、「ここのお庭はどんな草木の名前も分かるようになっているのでいいですね〜」と声をかけると、「植えた者がその都度プレートを立てているんですよ」と教えてくれました。正確な情報を伝えようとする日々の心遣いを、とても嬉しく感じました。
 庭園の外周に沿って続く石畳の散策路を行くと、瓢箪池の先に色鮮やかな赤門が見えてきました。ここと天佑庵門傍の文人像の面差しの違いは、私にもよく分かりました。赤門横の蓬莱園を眺め平坦な道を歩いて行くと路傍に六地蔵や劔塚(大刀不動尊)等があり、佛域の他の二か所にも六地蔵がありました。宝篋(ほうきょう)印塔近くの春山荘門の向うには二子玉川駅に通じる出口専用の駒沢通り出口があり、自然石の急な階段をもう上りたくない人への配慮が感じられました。また上が平らになっている大きな岩が道に置かれているので、そこに腰掛けて周りの景色をゆっくり見ながら一息つけそうでした。
 六観音近くの不許葷酒入山門(クンシュサンモンニイルヲユルサズ)と刻まれた結界石の先の山門には五島慶太翁が揮毫したと思われる“大日如来洞 慶太”の扁額があり、山門を潜り中央の石段を見上げると大日如来像が慈愛に満ちた表情で微笑んでいました。横顔を見ながら中庭に続く手すり付きの石段を上っていると、ゴーッという音と共に木々の間から東急大井町線車両が通過して行くのが見え、二子玉川と上野毛駅間の線路が目の前を走っているのに驚かされました。


石段下にあずま屋      石段上にあずま屋

菖蒲園

瓢 箪 池

(天佑庵門傍)文人像(赤門傍)        (東側)赤門(西側)             蓬莱園           風にそよぐ竹 

六地蔵 →                                           宝篋(ほうきょう)印塔  春山荘門向うに出口

後方に劔塚(大刀不動尊)  道の中央に平らな岩       六観音         不許葷酒入山門        大日如来洞

石段上に大日如来             大日如来の横顔       通過する大井町線車両     手すり付きの石段

 良い運動をし自然と歴史と文化に触れて心が満たされ中庭から展示室のある本館へ向かいましたが、車イスのご夫婦と思われる高齢者がロビーの大きな窓から中庭を眺めている姿が目に留まりました。四季折々の映像が見られる大型スクリーンがロビーに設置されていれば、勾配の急な庭園に足を運べない人もあの感動を共有できるのになと思いました。
 展示室1入口の愛染明王坐像(重要文化財)に会釈してから、竹内栖鳳・川合玉堂・前田青邨・川端龍子・奥村土牛等の日本画や硯・墨・印材のコレクションをさらりと鑑賞。展示室2では横山大観の画や月村正比古の陶芸作品を見て、徒歩5分の上野毛駅から帰路につきました。



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