ぎょっ! August , 2014 

 交通渋滞に巻き込まれ、タクシーから飛び降りました。目指す建物まで小走りしエレベーターに飛び乗って携帯電話をマナーモードに設定しようとすると、バッグの中に携帯がありません。後部座席を見回すこともなく領収書を受け取るや否や脱兎のごとく車から飛び出したので、運転手が「お忘れ物はございませんね」と私に声を掛ける間などありませんでした。落し物・忘れ物は若い頃からの日常茶飯事で戻ってきている確率が高いのでいつもはどっしりと構えているのですが、今回ばかりは“ぎょっ!”としました。携帯歴20年にして初めての経験だった上に、情報が詰まっている毎日の必需品だったからです。
 領収書に記載されているタクシー会社に電話しようにも、いつも使っている携帯が手元にありません。途中の階で降りて公衆電話からかけようと考えたのですが、街中ばかりでなく建物内でも激減している電話を探し当てるのは容易ではなく気が遠くなるような時間を要する場合があるので思い止まりました。

 仕事を済ませ場所を変えてから連絡先番号にかけると、当直の応対は手慣れたものでした。「領収書の上から三行目の数字を読み上げて下さい」と言われ、“車番”を伝えると、ドライバーに連絡を取ってくれました。「運転手が保管していますが帰社は午前4時なので、5時以降にこちらへ来て頂ければいつでもお渡しできます」という返答に、24時間営業はコンビニエンスストアだけではないのだと改めて認識しました。
 隣の区にあるタクシー営業所を昼過ぎに訪ねると携帯電話がずらりと並べてあり、私と同じような人がいかに多いかが分かりました。最寄りの駅前で乗車すると偶然同じ会社のタクシーだったので、往きの運転手が帰りも駅まで送ってくれました。近くで催される有名なお祭りや町内の話を道すがら聞き、車窓から繁華街とは趣の異なった景色を眺め、小旅行をしたような気分になれました。

 ターミナル駅に出て喫茶店で携帯をチェックすると急ぎのメールや留守電が入っていて、“ぎょっ!”とすると同時にのんびりとしていた気分は吹き飛んでしまいました。
 いつでもどこでも連絡を取り合える携帯の方が固定電話で話すよりも格段に多く、プライベートなメールの遣り取りもパソコンよりも携帯の方が圧倒的に多くなっています。アドレス帳に記入してある電話番号やメルアドが変更されても携帯内に保存されていると安心してしまい、移しかえる手間を省いてしまっています。携帯中心の生活になる前は30以上の電話番号を空で言えたのに、今はその半分も覚えられません。携帯を紛失していたならば、暫らくはてんやわんやだったでしょう。
 今迄で一番長い身近に携帯がない時間を過ごし、携帯に依存している自分に気付かされました。

 世間では、スマホやLINE依存症が問題となっています。それに比べるとスマホではなくガラケーを使いLINEもやっていない私の携帯依存度はかなり低いですが、その現象について漠然と考えてみました。
 手のひらサイズで気軽に持ち歩ける小さなパソコンとしての機能や便利さ・楽しさにはまってしまうと、いつもスマホを触っているようになるのかもしれません。一人一台の時代では周りの人も依存症に気付きにくいので、自分自身に歯止めをかける努力をしないと際限がなくなってしまいます。
 リアルタイムで気が合う仲間たちとメッセージの遣り取りができるLINEのグループトークは、スタンプのイラストも含めて楽しいものでしょう。しかし短時間での短い言葉のキャッチボールは一つ間違えると誤解が生じたり、攻撃がエスカレートしていじめに繋がったりします。教育機関や自治体が対策を講じているようですが、スマホやLINEを難なく使いこなしている小・中・高生にアイデアを出してもらうのも得策でしょう。
 今の小・中・高生達が社会人として活躍する時代になったら現在のようなIT関連の事件も減り、人々が快適に過ごせるツールも沢山開発されているのではないかと期待しています。



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