許容範囲                       May , 2015   
 

 週に一回はウィンドウショッピングに出掛けている繁華街近くに、若者に人気のストリートがあります。高層ビルが林立しているメインストリートから一本中に入った所にあり、暗渠化された川の上に作られた遊歩道に沿ってそれぞれに個性があるお洒落な店舗が並んでいます。三階以上の建物がほとんどないので懐かしい風景に接した感覚になり、行き交う若い人や年配者のファッションセンス・歩き方にも魅了されます。
 大きな通りと交差する地点にはブランドショップのビルがあり、今の季節は白い壁一面を青々とした蔦が覆っています。左側のレンガ造りになっている建物部分にある大きな窓の下にも蔦が這っていますが、先日はその場所でアジア系の二枚目俳優のような青年が右手に持った自撮り棒のカメラを見つめて一人で表情を作っていました。往来する人を気にかける様子はなく、まるで別世界に紛れ込んでいるようでした。
 彼に気を取られていると、白い壁の方から長身で青い目の三十代の男性が右手を顔の前にかざしてにこやかにこちらにやってきます。よく見ると小型ムービーカメラを手にしているので、おっとっとと急いで移動して撮影範囲から外れました。どうやら、ノーカットでそのストリートを撮りながら歩いてきたようでした。
  繁華街に行ったり電車に乗ったりすると外国人観光客が増えているのに気付いてはいましたが、今年の花見の季節以降それが顕著になっているように感じます。You Tubeやツイッター等のSNSで旅行者が映像や情報を紹介し世界中に拡散することによって、来日する人を引き寄せているのも一因でしょう。

 今や、誰もが手軽に自由にネットで発信できるようになりました。興味ある動画を配信したり瞬時の情報伝達や取得の手段として利用する人が増えていますが、問題も頻発しています。
 今月上旬には長野市善光寺の御開帳行事の際、空から小型無人機“ドローン”が法要行列の間に落下してきました。15才の少年Aが実況中継をしていて操作を誤ったものでしたが、彼はそれ以前にも関西の観光地などでドローンを飛ばしていました。中旬以降は東京都心部でドローンを何回も飛ばそうとしてその都度警察から厳重注意されていましたが、今月下旬に威力業務妨害容疑で逮捕されました。
 Aは、今年2月に起きた川崎市の中学1年男子生徒殺害事件後にプライバシーを侵害する生中継も繰り返していたそうです。“配信業”と自称している無職で未成年のAがこれほどの行動をとった裏には、金銭的援助をしている熱心な支援者の存在もあるのでしょう。良識ある行動を、願ってやみません。

 ドローンは誰でも買うことが出来て免許の必要もなく簡単に飛ばせることから急速に普及してきていますが、飛行を規制する法律が現在はないために未熟な技能や知識による事故が全国で発生しています。
 今月上旬ドローンに初めて挑戦した70代の男性がコントロール不能になり近所の住宅の玄関先に落下させてしまったり、下旬には練習中の30代男性がJR線の高架橋に落としてしまいました。
 これらの事故による被害者はいませんでしたが、昨秋の国際マラソン大会では撮影中の空撮専門会社のドローンが落下して女性スタッフが顔を4針縫う怪我をしています。
 空の産業革命ともいわれ民間での新市場拡大が始まっているドローンは、離島・僻地への物資輸送、警備や犯罪捜査・災害現場・農業などでの活用、出歩けない人達の買い物代行等、可能性は無限です。
 反面、プライバシー侵害や落下の危険性等、クリアしなければならない問題点もあります。条例で飛行禁止区域を設けている自治体もありますが、当面はドローン所有者の安全意識と常識に期待する他ないでしょう。趣味の玩具とは考えないで、使用場所をわきまえ技能に習熟してから臨んでほしいものです。

 最近の私は、渋谷駅前のスクランブル交差点をなるべく通らないようにしています。
 TV各局の定点情報カメラによるライブ映像や街頭インタビューは許容範囲でしたが、世界的な観光スポットとなってからはカメラやスマホを構える外国人をあちこちで見かけるようになったからです。彼等は単に旅の記念やネットで発信するためだけに撮影しているのでしょうが、周りにいる人のプライバシーに配慮している人は限られているでしょう。神出鬼没のカメラは避けるに越したことはないと、実行に移しています。
 情報を送る側にも見る側にも的確な判断力が必要とされている時代ですが、情報が氾濫しすぎてついつい忘れられがちになっている現状を残念に思っています。



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