動 く             July , 2015 


 バリアフリーが浸透しユニバーサルデザインの街作りも普及し始め、人の手を借りなければ外出できなかった人達が一人で外出できる時代になってきました。
 どっしりとした電動車いすに乗っている身障者に加えて、最近は大きなフロントバスケットとバックミラーを備えた肘掛け椅子のようなシニアカーのハンドルを握り買い物に出掛ける高齢者も増えています。自分自身で希望する場所へ気軽に行けることが行動範囲を広げ、人生をより楽しいものにしてくれています。

 先日繁華街のランドマークとなっているビルの地下にある名店街に行った時、ジョイスティックレバーの軽量型電動車イスでくるくると動き回る70代の女性が目に留まりました。大人六人が横並びに歩いても十分にゆとりがある通路で人影もまばらだったとは言え、「何だか危なっかしいな」という印象を受けました。
 付き添う人がいないその車いすの横を注意深く通り過ぎて暫らく歩き、目的の店で買い物を済ませてから長く続いている通路を引き返しました。「あっ、ごめんなさい」という声が聞こえたのでその方向を見ると、あの車イスの後部とショーケースの間に人が挟まれていました。夏休み中の学生らしい素足にミニワンピースの女性二人のうち一人はするりと抜け出しましたが、もう一人は固まって呆然と立ちつくしていました。
 幸い大事には至りませんでしたが、高齢者に接触していたら転倒事故になっていたかもしれません。

 精神年齢が若い頃から止まったままの私も、とっさの行動に機敏性が欠けてきているのを痛感する機会が増えてきました。その自覚があるので、エスカレーターを利用する時は必ず手すりに掴まります。そして余程混雑していない限り前の人との間隔を一段とり、動作が緩やかなお年寄りやキャリーバッグ等を持っている外国人観光客の後ろになった時は二〜三段あけています。また地下のプラットホームから“高速”エスカレーターに乗らなければならない場合は、ステップの黄色の線の内側で気合を入れています。
 今の高齢者は10〜20年前と比べると5〜10才若返っているという分析結果が先月日本老年学会で発表されましたが、過信は禁物です。ウィークデーの日中に外出すると元気でお洒落な年配の人達をよく見かけますが、出(退)社や昼休みの時間帯と比べると人の動きがかなりスローテンポです。

 高齢者も電動車いすの人も、動く時は細心の注意を払ってほしいと願っています。
 電動車いすと同様に運転免許不要の自転車は道路交通法では軽車両となっていて違反をすると罰せられる場合がありますが、電動車いすは歩行者として扱われています。取扱いに熟知するまでは、安全な場所で練習を重ねてほしいものです。また経験豊富な人の、無謀運転も御法度です。猛暑の夕暮れ時に交通量の多い丁字路でスピードを出して車道を斜め横断して行く車いすを目撃した時は、びっくりしました。青信号になり横断歩道を渡り始めた私の後ろから音もなくやってきて、左方向の歩道へと走り去りました。
 自立し充実した生活も、事故に遭ったら台無しになってしまいます。一人一人が安全第一の心を常に持ち続け、皆が笑顔でいられる世の中であってほしいものです。

       



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