渾身の力    加藤久美   October , 2009


 先日、大道芸人・ギリヤーク尼ヶ崎さんが毎年新宿三井ビル「55ひろば」で行っている、『青空舞踏公演』を見に行って来た。
 初めてギリヤークさんを「55ひろば」で見たのは、もう10年以上前のこと。確か、テレビのドキュメンタリー番組でその存在を知り、その後、「55ひろば」のことを何かで知って、出掛けて行ったと記憶している。
 初めて見た時の衝撃は、物凄かった。

 そして、翌年も「55ひろば」へ行き、この時、手紙を添えて投げ銭をしたことをキッカケに、ギリヤークさんご自身から、毎年手書きのご案内が届くようになった。
 以来10年以上の月日が経ち、ギリヤークさんは、国内はもとより、海外でも絶賛される活躍を続けられ、現在79歳。大道芸人として41周年を迎えられた。

 今年頂いたご案内には、昨年末、心臓の手術をしたことが記されていた。
 術後のリハビリは、さぞかし大変だったことだろう。

 ギリヤークさんを愛する支援者・ファンは多く、今年も、「55ひろば」は、開始時間のずっと前から沢山の人々で溢れていた。
 みんな、ギリヤークさんの登場を待ち焦がれ、ギリヤークさんに逢いたい気持でいっぱいだ。

 ギリヤークさんは、開始時間を少し過ぎてから、ようやく姿を現し、皆が温かい拍手で迎える。
 一見、いつもと変わらない姿に見えたが、その右手が痙攣している。

 ギリヤークさんは、いつも通り、(恐らく、41年間ずっと変わらない手順で)淡々と準備を始める。
 (お客さんの前でメイクをし、着替えるのだ。)

 諸々のセッティングを整え、ボロボロのカセットデッキのスイッチを入れる。
 カセットデッキからは、「禁じられた遊び」のメロディーが流れ、淡々と白塗りのメイクを始める。

 ・・・・・、途端に、涙が溢れて止まらない。
 自分でも明確な理由がわからないまま、涙が溢れてくる。
 79歳の今もなお、大道芸人として生きる、そのとてつもない生き様が、その姿が、「禁じられた遊び」 そのものに思えて来る。

      <赤ふんどし一枚>のその体は、年齢を感じさせない美しさで、
     海外でも大絶賛の「じょんがら一代」「念仏じょんがら」をはじめとする定番の演目を
     渾身の力でやりきったギリヤークさんは、晴れやかな笑顔でこう言った。

        「心臓の手術をして、ペースメーカーが入ってますが、
              50周年まであと9年、88歳まで頑張ります!!」

          88歳のギリヤークさんが楽しみだ。


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