Sunny   June, 2005


   新宿駅で小田急線の
電車に乗って出発を待っていると、向かいにヘッドホーンの音漏れが喧しい若い男が座った。股を広げて偉そうに座っている。そこへおばあちゃんがやって来て、彼の隣に座った。ところが、その座り方が変わっていた。窓に向かって座席に正座したのだ
   唖然として見ていると、今度はバックから大福餅とペットボトルのお茶を取り出し、窓の桟に置く。車窓の景色を眺めながらティータイムって訳か。隣の若者は迷惑そうな顔をして、チラチラ見ている。
 
   間もなく電車は動き出した。駅構内を抜けると車窓にはいつもの町並み。おばあちゃんは景色を観ながら,お茶を一口。微笑ましい光景だが、電車の揺れでおばあちゃんが後へひっくり返らないか、そればかりが気になって仕方がない。正座しているのでひっくり返ったら確実に後頭部を打つ。
   だが、そんな心配はよそにおばあちゃんはのんびりと電車の揺れに身を任せている。
 
   一瞬電車が大きく揺れた。おばあちゃんの体も。僕は思わず背もたれから体を起こした。
  でもおばあちゃんは事も無げに、大きめに体を揺らしただけでやり過ごした。いつもそうしているので熟練しているのだろう。流石だ。
   だが、大きく揺れた瞬間、隣の若者の手がおばあちゃんの体を支えようとする意志を持ってピクッと動いたのを、僕は見逃さなかった。



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