旅に詠(その1)     Shigeru   July, 2009


 母の故郷が伊豆東海岸なので、子供の頃から、良く連れられて行った。熱海、伊東、綱代のどこからも三里の処に在ると言う初島は、土地の青年達が格好の遠泳目標としていた話をよく聞かされた。
   我が母は ここに育ちぬ 懐の 広く穏(おだ)しき 伊豆多賀の海
 多賀の入江はいつも穏やかである。今は海岸線が舗装されて、広々とした道路が出来ているが、片町辺りは漁師町特有のたたずまいが失われて「いさば(漁場 , 土地の人達は餌場のなまりだと言っている)」と言っていた遠洋漁業の補給港の影が薄れている様に思われていささか淋しい。

   水の色 紫に澄み 秋されば 旅の心を かき立てて止まず
 碧く澄んだ空、残された緑の間に紅葉が映えて、水に映る秋は絶好の旅行の季節である。旅と言うにはほど遠い話だが、一泊の小旅行は、書道グループの湯河原温泉の万葉荘、津久井の湖月荘、体操グループやダンスの仲間では逗子海風荘、箱根、伊東、ある時には水上温泉等ホール目当てに良く利用したものである。

  差す潮か 引く汐の音か 枕揺(ゆ)り 日向の宿に 泊てし朝明け (九州青島海岸にて)
  差しもせず 引くとも見えぬ 竹島の 影を映せる 朝明けの海    (渥美湾西浦にて)

 逗子鎌倉の三浦半島周辺には、いつでも寸暇を見ては良く歩く。俳句のグループとなると京浜急行の金沢文庫駅に集合して鎌倉行バスで朝比奈峠を越え十二所の光触寺(こうそくじ)の塩嘗(しおなめ)地蔵で句会、続いて滑川沿いに吟行八幡様の段葛前の蕎麦屋で食事をして漫(そぞろ)歩きで鎌倉駅から帰るのが常道。俳句の講師同行で結構充実したものであった。
   朝比奈の 切通しあたり 過ぐるより 明るくなりて 雲の走れる  (朝比奈峠にて)
   来てみれば 竹の皮散る 報国寺    (竹の寺)
   白足袋の よく似合ってる 人がいる  (お坊さんではない、連れの女性です)

   数多(あまた)ある 無縁仏の その中に 童子とあれば 涙さそわる  (杉本寺十一面観世音)
    (自慢じゃないが野次馬根性丸出し、句にも詠にもなっちゃいません)





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